すきがいっぱい

 赤の他人でも、1年もおれば自然といろんなことが見えてくる。好きなもの、嫌な話題、今日は本調子やないんかなとか、どういうこと考えてるんか。

 全部が全部あってるとは思わんけど、わしが感じたまま信じる分には勝手やし、実際大きく外れることもそんなにはない。

 毒でも盛られたらどないするんと思うくらい、食べ物の好みは分かりやすい。特にCrazy:Bの連中は、食卓を囲む頻度が高いからやろか。

 苦手なもんは涼しい顔して食べてたら分からんけど、好きなもんは隠してても分かる。たとえばHiMERUはんは公式的にはコーラっち言うてるけど、ケーキなんかはちっと苦めのやつばっかり選びよる。生憎、コーヒーだのカカオ何%だのの良さがわしにはいまいち分からんので、一口のお礼にとってつけたみたいな一言を添えなあかんことがままある。

 ニキはんや燐音はんと違って本音を隠すからか知らんけど、こうやって考えると思いつく「いろんなこと」はやたらHiMERUはんのことが多い。

 笑ってても嫌やっち思ってるときは組んだ腕で人差し指が伸びるとか、寝たいときは窓際の席に座るとか、変なときは変やっちことに気付いとらんとか、ちょっと考えただけで浮かんでくる。

 最近気付いたのは、笑いを堪えきれんくらい面白がってるときに話しかけると、素っ頓狂な返事が返ってくるっちこと。

 なんやったか忘れたけど、ニキはんがよう分からん言い間違えをしたときにHiMERUはんの喉がググッと鳴ったことがあった。もう大人しく笑ったらええのに、固く握った拳を眉間に当てて肩をふるふる震わせていた。たしか出番まであんまし時間がなくて、わしにはどうしても聞いておきたいことがあったんやと思う。

 悪いなと思いつつ声をかけたとき、やっと波をやり過ごしたHiMERUはんは知らん単語を発しながら、真面目な顔して振り向いた。外国語とかやなくて、たぶんHiMERUはんにもなんのこっちゃ分からんのやろと思う。

 あえてひらがなにするなら「んぇ?」とか「ほへ?」とか、そんな感じの言葉をいつもみたいに「どうかしましたか?」っち顔して返してくれた。

 それが妙に心に残って、今度はわざと話しかけた。晩ご飯の席で、燐音はんがなんや自業自得でえらい目に遭うたっち話をしとるとき、聞きたいことも話したいことも特にないのに俯くHiMERUはんの腕をつっついた。

 本音を明かしてくれんでも、HiMERUはんのこともだいぶ分かるようになった。そう思うのに、あの間抜けな声をもっと聞きたい。

 どんな人間でも常時構え続けるのは無理がある。寝起きから「HiMERU」のHiMERUはんでも流石に、大笑いしそうなのを堪えながら装うのは難しいらしい。だから、つまりHiMERUはん自身の声っちわけやろ。中身も何もあったもんやないけど。

 赤の他人でも、1年もおれば自然といろんなことが見えてくる。やのに最近、自分のことがよう分からん。

 思わずふっと吹き出した話題のブログを保存した。これやったらHiMERUはんも笑ってしまうんやないかと思って。

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